絵手紙いいNetマガジン-6号 『蝉』

蝉

先日、紀州の山中で「大人の休日」としゃれ込んで、
友人たちと何十年ぶりかでキャンプをした。
といっても村営のバンガローに泊まったのだが。

定番のバーベキューを楽しんでいたら、横の木に
羽化したばかりのミンミン蝉を見つけた。
まだ抜け殻の上に留まっている体は小さく、
羽根は青くて儚いくらいに透き通っている。
大の大人たちがデジカメや携帯で懸命に撮り、
わいわい大騒ぎ。
かわいいだの、素敵だの、綺麗だのと感動している。

先日の新聞に「日本人はなぜあんなにファーブルが
好きなのか不思議だ」と地元のフランス人の感想が
載っていた。
フランス人は虫に関心がなく、
昆虫などそもそも目に留まらないというのだ。
蝉の羽化の美しさは彼らには存在しないのである。
アブラ蝉は暑苦しいとか、クマ蝉はやかましいとか、
カナカナを聞くと寂しいとかいうこともなくて、
ただうるさいだけの「ノイズ」なのだろう。

ところで日本人は、有名な芭蕉の「古池や…」という
俳句を聞くとき、何匹の蛙が飛び込んだところを
想像するだろうか。
周りの人に聞いたら、自分を含め、全員が一匹と答えた。

友人から聞いた話だが、あの日本通のラフカディオ・ハーンが
訳したとき「蛙」には’sが付いていたという。

これは、環境の刷り込みなのだろうか。
民族固有のDNAがあるのだろうか。
国際化といっても、彼我の間には、なかなか深い溝が
あるのかもしれない。


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